不動産の”囲い込み”は社会的コストがかかる
こんにちは。
不動産売却のコンシェルジュ、杉野です。
今回の記事では、不動産取引の現場で嫌われている囲い込みの問題点を、社会的コストの面で検証してみたいと思います。
社会的コスト、つまり、囲い込みをすることで経費がたくさん掛かり、社会にとってマイナスだということです。
まず、基本的なポイントとして、『不動産の囲い込み』とは何かを簡単に解説をします。
【”囲い込み”とは】
不動産会社が売却依頼を受けている不動産情報を、他不動産会社に出さず、自社の顧客にのみ情報提供して独占すること。
囲い込みをする会社は、物件情報を問い合わせしても「商談中です」と断ったり、「担当者不在です」と言って連絡してこなかったりします。
ご存じの方が多いと思いますが、不動産取引は売主様からも買主様からも仲介手数料をいただく、両手取引が可能です。
(不動産会社が売主様と買主様、両者と握手しているイメージです)
両手取引となれば一般的には売主様からも買主様からも『3%+6万円(と消費税)』の報酬をいただけるため、1口で2倍美味しい取引となります。
そのため、悪い不動産会社は他社に情報を出さないようにすることで、わざと両手取引を狙うことが可能となります。
この囲い込みをすることで、次のような問題が発生します。
1.不動産情報が拡散しないことによる、販売機会の減少
2.販売機会減少により、販売期間が長期化
3.販売期間長期化に伴う成約価格の下落と、社会的コストの増加
本来、不動産情報はお客様に広く行きわたることで販売機会が増え、希望する金額で売却するチャンスも相対的に高まることとなります。
しかし、囲い込みをされた物件は一社にのみ情報が独占されてしまうために、情報が市場に浸透しづらくなり、売れる不動産がなかなか売れなくなってしまうことがあります。
また、私の集計データでは、不動産の販売期間が延びるほど成約価格は下落する傾向にあります。
そのため、囲い込みによって一番被害を被るのは不動産の売主様ということとなります。
社会的コストが増加する
そして、今回私が注目しているのは、3番目に挙げた社会的コストの増加です。
社会的コストとは、広告費、人件費、家賃や光熱費といった、不動産会社を経営するために必要な費用だと思ってください。
ここに、簡単な表を作成しましたので、そちらをもとに解説していきます。
『前提条件』
①登場する不動産会社はA社(売主様側)とB社(買主様側)
②中古マンション2,000万円の売買取引
③片手取引の仲介手数料は72.6万円(税込)
④A社とB社共に、コストは月50万円(税込)
⑤囲い込み無しの場合の販売期間は1カ月、有りの場合は2カ月と設定
囲い込み無し | 売上 | コスト | 利益 |
A社 | 72.6万円 | 50万円 | 22.6万円 |
B社 | 72.6万円 | 50万円 | 22.6万円 |
合計 |
145.2万円 | 100万円 | 45.2万円 |
売上からコストを引いたものが、利益として残るものです。
囲い込み無しの場合、A社とB社が協力することで販売期間が短縮され、1カ月で売却することができました。
片手取引となるため1社あたりの売り上げは少ないのですが、A社とB社を合計した利益は45.2万円の黒字となっています。
そして次に示すのが、囲い込み有りのケースです。
囲い込み有り | 売上 | コスト | 利益 |
A社 | 145.2万円 | 100万円 | 45.2万円 |
B社 | 0万円 | 100万円 | -100万円 |
合計 | 145.2万円 | 200万円 | -54.8万円 |
※販売期間2カ月のため、コストは2カ月分
囲い込み有りの場合、合計で54.8万円の赤字となってしまいます。
なぜならば囲い込み有りの場合には情報が拡散されない結果として販売期間が延び、A社もB社もコストが2カ月分の100万円かかるためです。
売上の合計145.2万円は変わらない一方で、合計コストが200万円と2倍になり、合計利益が54.8万円のマイナスになるのです。
A社とB社しかいない非常に単純な社会ですが、囲い込みの結果、社会的にはコストが増加するばかりで、健全な状態ではないでしょう。
さらに話しはこれで終わらず、囲い込みをされて赤字となったB社は、利益を取り返すために自社でも囲い込みをするという選択をするかもしれません。
A社もB社もお互いに囲い込みを始めると、不動産の流通がますます阻害され、社会のコストもさらに増加します。
自社のエゴが社会にとってのコストとなり、ひいては売主様が割を食う社会となってしまうのです。
囲い込みを無くすには
残念ながら、囲い込みを明確に禁止する法律は無く、その実態もつかみにくいため、不動産取引の現場では各不動産会社のモラルによるところが大きいのが現実です。
しかし、他社が囲い込みをしているからと言って当社もOKだという考えは、社会で通用しないことも明白です。
(目の前を歩く人がゴミをポイ捨てしているから私も捨てていい、とはならないでしょう)
もちろん当社は一切囲い込みを行わず、真に売主様の利益が最大化できるように尽力しています。
これから不動産売却を始める売主様にとっての良きパートナーであり、コンシェルジュでありたいといつも願っています。
一朝一夕に囲い込みを無くすことはできないでしょうが、不動産営業に携わる一人一人の心掛けと、こうしたメッセージの発信が、やがて、公正で明るい不動産取引の未来を創っていくのだと信じています。
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今回は不動産の囲い込みと言う、これまでに不動産関連のブログやネット記事などでも散々取り上げられたテーマについて解説してみました。
社会的コスト、という面から解説するのは少し挑戦的でしたが、うまく説明ができているでしょうか。
いずれにしても、売主様の利益を逸失する囲い込みはよくない!、という認識は共通しています。
日々、明るく自由な不動産取引を目指して、今日も元気に営業しております。
当社では売却不動産を随時募集中です。
相続した空き家がある、空き地に手を付けられていない、住み替えを検討しているなど、不動産にまつわることであればどのようなことでもご相談ください。
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